『遺品』

 

とうとう来るべき時がきてしまった

それなりにするべきことはしてきたし

それなりに心の準備はできていた

 

だから

取り乱すこともなく

そうかとだけ受けとめた

 

皆もそうだった

だから

比較的淡々と進めることができた

 

いつものように

忙しい毎日も

容赦なくこなし

 

急に入り込んだ

スケジュールにもあせることもなく

対応できた

 

周りの方たちの

温かくもぬかりのない

完璧なまでの設定ですべては進んでいった

 

それは信じられないほど

スムーズな幕引きであった

想像を超えた

 

このままの感情でずっといくのかと

何となくだが思っていたふしがある

一瞬にして崩れるその瞬間まで

 

本人の実際に使っていた

大切な物に触れた時に

多くの複雑な思いが混ざり

 

実に自然と

悲しみで心が満たされた

一度溢れてしまうとそれはとめどなくなった

 

こんなはずではなかった

ずっとクールに

封印していられると思っていたのであろう

 

次々に現れては消える残像が

せつなく心に迫る

それは私が背負うべき重みを示しているかの如くであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2015.3.1